急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし③

前回のその急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし②の続きになります。
今回は痛い話ばかりしているので、苦手な人はお控えください〜。

2月 天井のない痛み

2月8日から痛みが出始めました。
初めはどんなふうに痛み始めたのかは覚えていないのですが、とにかく足が熱く熱くてたまりませんでした。
足そのものは熱くないのに、体感でめちゃくちゃ熱い。
まるでストーブに近距離で当たり続けているような、そんな熱さだったのですが、日によっては足全体が燃えるように感じるときも。
例えるなら…カイジ。カイジの焼き土下座
利根川がカイジとの勝負に負けて、鉄板で土下座をするあれです。私は今あの鉄板上に仰向けになってる…そんな気持ちになりました。

いつもこんな気持ちだった

そして何故か肛門も熱く感じる時があって、そのときの日記を見ると「地獄の激辛四川麻婆豆腐を肛門から注入したかんじ」と例えていました。
あのときは肛門おかしくなってるんじゃないかととても不安になりました。

痛みの種類は本当に様々で、まさに痛みのデパート状態

ある日は腰にボルトをぶっ挿したような痛み、(背骨や腰がカッチコチで少しでも体を動かすとピンポイントに激痛)、
またある日は剣山のベッドで寝ているような痛み、
またまたあるときは胸下あたりにでっかい刃物でも降ろされた(ギロチンみたく)様な痛み…。
リアルで体験したこと無いのにそんな例えが出るのは変ですが、本当にそれ以外例えようのない痛みが立て続けに襲いかかってきました。

中でも一番強い痛みを感じるのが、胸下の胴回り部分でした。
胴回りに出来た痣とか傷の上からロープで強く巻き上げているような痛みで、中でもみぞおちあたりは、服が擦れたり、息がかったりするだけでもヒリヒリズキズキと痛み、その痛みは日を増すごとに更に痛みレベルを更新していきました。
看護師さんが毎日、「今日の痛みは0〜10で何段階?」と聞かれるのですが、「今日も10です!」としか答えようがありませんでした。

先生がいろんな痛み止めを出してくれたのですが、どれもこれも一向に効きませんでした。
薬剤師さんや院内でガンなどの疼痛ケアをしているチームのみなさんにも尽力してもらったのですが、効果は得られず。
あまりの痛さにリハビリもできなくなって、ギャッチアップ(ベッドの背を起こす)すらできなくなりました。
ベッド柵を握られたり、誰かが横切っても痛みを感じました。
ご飯も寝ながら横向きで器用に食べたりしていたのですが、それすら辛いときは看護師さんや母に食べさせてもらいました。

3月 死にそう、でも死ねない

あまりにも続く痛みに気がおかしくなりそうだったそんなさなか、自然と痛みをやり過ごす方法を身につけました。
それは「脱力」です。
痛い時ってつい、「いてえ〜!いてえよお〜!」と力んでしまいがちですが、むしろそれは逆効果。痛いときこそ脱力することで、私の場合気持ちが落ち着き、変な力が入らず痛みをやり過ごすことができました。
これは修行…と思いながらやり過ごしていたので、この術を身に着けたときは「悟りが開いた」と話していました。(アホ)

脱力しきってる様子。巨乳に見えるが、服をわざと浮かせて体に触れないようにしているだけ。

とは言え痛みは無くなるわけではなく、(やり過ごすだけで痛いのは痛い)日々痛みのレベル更新は続きました。

そんなある日、朝目が覚めてすぐ今までに感じたことのない激痛が突如襲いかかってきました。
それは脱力すら忘れるほどの痛みで、まじで死ぬと思いました。

痛みで頭がおかしくなったのか、すぐにナースコールを押すところ何故かボーダー夫さんに電話をする私。(本当に死ぬかもと思ったからかもしれない)

その後ナースコールを押し看護師さんに「まじでやばいです死ぬほど痛い」と伝え、その後先生もすっとんで来てくれました。

今までで見たことのないほど痛み苦しむ私に先生は、効き目はないかもだけど一か八かの提案をしました。
それは硬膜外麻酔。普段手術後の疼痛ケアなどに用いられる麻酔を私の痛み対して使うというのです。

今でこそあの痛みが神経痛であるということがはっきりと分かっているので、体を麻痺させるという点で痛みを緩和させることは出来ても、根本は消えてないのは明確なのですが、当時神経痛のお薬も効かなかったため、本当に何の痛みなのか確証がもてず、一時だけでも痛みを和らげる術として先生はこれを提案してくれました。

私としては死にそう、でも死ねない、とにかく辛い、そんな状態からなんとか脱したくて、痛みが緩和できるかもしれないと言う事ならすぐにでもしてくださいと懇願しました。

しばらくして硬膜外麻酔の手術をしてくれる麻酔科の先生(ハンサム)が手術の同意書を持って来てくれました。
余談ですが、私がそれにサインした後に麻酔科の先生が「まあ多分効かない思うけど」と今一番言わなくていいことを言っていました。バカか。
(そのときはそう思ったけど術後頻繁に病室に様子を見に来てくれたハンサムでいい先生だよ)

そんなこんなで無事手術も完了し麻酔も効いてきて体がぼぅとなり朝イチほどの痛みは一旦去りました。
私が行った硬膜外麻酔にはPCAポンプというのが接続されていて、1時間おきに手持ちのボタンを押せば少量の麻酔が流れ、インターバルさえ守ればセルフで麻酔を打てる仕組みになっていました。
とは言えこれで安心とはいかず、結局のところ麻酔なので切れるともちろん痛みは復活するわけで。
しかも脊髄付近に外部からのカテーテルが挿入されいて、それをそのままにしておくのは非常にまずく、(最悪の場合挿入口からウイルス侵入し、脊髄や脳に感染する)この麻酔も一時的な処置でしかありませんでした。

このままでは本当にいつリハビリができるか分からないので、本気で痛みを緩和すべく疼痛緩和を専門とする科に転科することになりました———。

今回はここまでです。
痛い話ばかりですみませんでした…。
次回は回復していく話をします!

次回、せきそん嫁、ターミネーターになる。

それでは〜!

【この話の続きです】
急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし④
急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑤
急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑥
急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑦