急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑩

急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑨のつづきになります。

前回床トラのはなしをしましたが、分かりにくかったので補足で床トラ動画を今更載せておきます。

一時帰宅

床トラがなかな習得できず、運動機能の回復も感じられない悶々とした日々が続き退院もあと2ヶ月に迫った頃、念願だった一時帰宅の許可が降りました。
一時帰宅というのは現在の状態で自宅に戻ったときちゃんと快適生活が送れるかどうかの確認をする為のもので、生活の中で困った点やらを徹底的に洗い出す大事なイベントです。
でもまあそんなことは私にとっては二の次で、とにかく一瞬でも実家に帰れることが嬉しくってたまりませんでした。

恐らくこのとき実家には10ヶ月以上は戻っておらず、一人暮らしをしていたとは言えここまでの期間離れたのは初めてで、実家大好きっ子の私としてはこの状況は苦痛以外の何でも無く、入院中家族に愛犬の動画を催促しては自分の首を絞める、そんな日々を送っていました。

「もうすぐハル(愛犬)に会える!」というモチベーションで己を奮い立たせ、床トラの鬼と化したPTさんOTさんと共に、一時帰宅に向けて全力リハビリに励みました。

結局「台を使って手を高い位置で踏ん張るようにすればやっとできる」ぐらいまでしか仕上げることは出来ませんでしたが、鬼コーチの追い込みのおかげもありなんとなくコツは掴めてきたような気がしました。

足元に高さのある台を置いてやっと出来ていた。

車椅子で初めてのお出かけ

一時帰宅当日。
半年以上ぶりの外出ということもあって、ひっっっさしぶりに普段着を着て化粧をしました。
化粧ってこれで合ってるっけ…と不安になりながら数ヶ月前まで現役で使われていた使用期限はとうに過ぎているだろう化粧品をためらいなく使いなんとか形にしました。
化粧した姿をスタッフさんに冷やかされて恥ずかしいながらも「ここまで回復したか…」と思いしみじみ…。
迎えに来てくれていた両親もなんだか嬉しそうに見えました。
一方ボーダー夫さんはというと、初めて彼女の実家に行く、しかも泊まりでって状況にかなり緊張していたそうです。

実家へは車で帰ります。
病院とは隣の県なのでそこまでは離れておらず、およそ1時間半ぐらいの道のりです。

この体になってから初めての外出だったので、やることなすこと全部が久しぶりでもあり以前とは状況が全く違うという点でいうとほぼ「初体験」でした。
車乗るの逐一大変だなとか、車内ってこんな揺れるんか、この体の不便さ大変さを再度痛感しました。

帰り道、かねてより楽しみにしていた「シン・ゴジラ」を観て帰ることになり、シネコンのあるイオンに寄ることに。

このイオンは私が通っていた高校の最寄り駅に隣接されていて高校生の頃毎日のように行ったよく知った場所だったのですが、初めて車椅子で行ってみて自分の目線の低さにびっくり。
ちょっとレイアウトとかが変わっていたこともありますが、感覚はほぼ初めてきた店感
実はこれは未だにそうで、昔行った懐かしい場所は大体かあの頃とは違う印象を受けることが多く、やっぱり少し寂しい気持ちになります。

この日は沢山の人が居る場所に車椅子で出るのももちろん初めてだったので、周りの目線はどうしても気になりました。
私の外見めちゃくちゃ病人っぽかっただろうし、若い女っていうこともあってすごい哀れに思われたかもしれません。
やっぱり車椅子生活になってしまった人は出不精になりがちだそうです。
以前車椅子バスケをされている男性にお会いしたときに、その方は退院後も半年は家から出る気になれなかったと言っていました。

さて、その後シン・ゴジラを観終えイオン近くにあるバウムクーヘンで有名なたねやが経営してる「ラコリーナ」という施設に行きました。
焼きたてバウムクーヘンが食べれて田んぼとかがある建物がおもしろい楽しいスポットです。(説明雑)
しかし私がこちらで一番おすすめしたいのは多目的トイレです。

ラコリーナのトイレ、めちゃくちゃいいですよ。

滋賀県一の多目的トイレと私は自負しています。
えっ…どんなすごい機能が…とかは期待しないでください。
ただ何の欠点もない100点満点のトイレとだけお伝えしておきます。
動線もバッチリで鏡もきちんと設置されているちゃんとしたトイレです。
基本デザインとかは無視されがちの多目的トイレですが、こちらのトイレはちゃんと「ラコリーナの多目的トイレ」として空間デザインされていてこだわりを感じてなんだか嬉しかったです。
このトイレと出会っていたから今住んでいるリフォームしたお家もデザイン面でも細部までこだわれたんだと思います。

トイレだけしにラコリーナ行きたいわって思いました。(ちなみにそのトイレはメインショップのある建物のトイレではなく、その建物を抜けて外に出るとあるトイレ)
とは言ってもトイレだけじゃなく、ここのバウムクーヘンサブレのバターサンドもめちゃおいしいので、ぜひそれは食べていってくださいね。

バームクーヘンサブレ。このサブレでバターサンドを作ってくれる。おいしい。

[画像引用]バームサブレの秘密 | ラ コリーナ日誌

さてそんなこんなでやっとこさ実家に帰ってきました。

愛犬との再開

満を持して実家へと帰ってきました。
家を前にして離れていた期間の割にそこまで久しぶり感はあまり感じませんでしたが、窓からこちらを強い眼差しで見つめる一頭の犬を見た瞬間嬉しさがこみ上げてきました。

玄関扉を開けた瞬間外に飛び出してきた愛犬ハル。
きっとハルの中では私は死んだ人間だったのでしょう。
生きとったんか!ワレ!!!」と言わんばかりの訳の分からんテンションで体全身をくねらせ私に突撃し、本物なのかを確かめるように私の手にアマガミを繰り返し、クンクンピーピーと鼻息荒く鳴きました。
熱烈な歓迎に私も嬉しくなって思いっきり撫でくりまわしてやりました。
あのときのハル可愛いのなんのって…。
しかしそんな感動の再開も真夏暑さのせいもあって、ものの数分でいつものテンションに落ち着いいたハル。
そんなところも相変わらずでういヤツ…でした。

感動の再開。

車椅子で家の中に入ってみてまず家の狭さに驚きました。
こんなに手狭だったか?!と自分の記憶を疑うほどです。
やっぱり病院ってめっちゃ快適に設計されているんだなと身を持って実感しました。
通路にしても旋回できるギリギリの幅だったり、トイレに至ってはちょっと縦長だったりしてどうやってアプローチするんだっていう。
一応何かとあると便利だろうってことで病院から借りてきてた50センチの台をトイレに突っ込んで無理やりアプローチを作ったりしましたが、流石に退院後も毎日これはやばすぎるということで、今後トイレは工事をすることになりました。

私が知らない間に実家のテレビが37型から56型の多機能テレビに変わっていたり、ついこの間生まれた甥っ子が倍以上に大きくなっていたりと驚きも多々ありましたが、基本的に昔と変わらないずにある実家はやっぱりいいな〜と思うそんな日になりました。

その後、1泊2日の一時帰宅を終え、翌日から休み無しのリハビリ合宿の日々が始まるのでした。

今回はここまでです!
それでは〜。

【この話の続きです】
急性散在性脳脊髄炎にかかったはなし⑪