脊髄損傷になってからのリハビリのはなし

こんにちは!せきそん嫁です。

最近ブログのネタも枯渇してきて、元からうっすうすな内容がオブラートばりに薄くなり始めた当ブログ。
それでも記事をアップするたびに覗いてくださる読者の方々には本当に心より感謝申し上げます。

ネタが無いときこそ原点回帰、脊髄損傷患者さんやその周りの人達が欲している情報をお届けするという当ブログの根っこの部分を意識しながら書こうと思います。

さて、そんなときに便利なのが関連キーワード取得ツール。
検索キーワードを入力するとそのキーワードに多くサジェストされるワードを教えてくれる、ブロガーにはありがてえツールです。
で、関連キーワード取得ツールいわく「脊髄損傷」を入力するとサジェストされることの多い検索ワードは「治療」「再生医療」「リハビリ」とこと。
…ンンン?そういや1年ちょっとブログやってきて、リハビリがテーマの記事ってあったかな。

ということで今回のテーマはリハビリテーションです!

リハビリとは

リハビリテーション【rehabilitation】
事故・疾病で後遺症が残った者などを対象に、その能力を回復させるために行う訓練や療法。広義には、社会生活関係で脱落・背離した者に対する回復のための支援サービス。教育・職業・心理等の分野がある。社会復帰。リハビリ。
出典 三省堂大辞林 第三版

私のリハビリ年表

201512月末 急性散在性脳脊髄炎を患い寝たきりになる
20161 病気が発症してから1週間後、脊髄損傷に
20161月~5 神経痛による体の痛みでまともにリハビリが出来ず、ほぼ寝たきり
20166 リハビリ病棟のある病院に転院し、本格的にリハビリを開始
201610 リハビリ病院を退院 実家近くの整形外科でリハビリを始める
201712 整形外科でのリハビリを辞める
20181 結婚 実家を離れ新生活が始まる
20182 新居近隣のリハビリ外来の病院でリハビリを始める
現在 リハビリ外来に通い続けている

 

受傷当時は、脊損なめきっていたのと自分の身体を過信していたので、リハビリを始めたらそのうち治るだろうと思っていました。
まさか3年経っても変わらず自力で立つことすら出来ないとは想像もしていなかったはずです。
当時の自分を思うと現状はかわいそうだけど、今は当時思ってた程の絶望感とは距離が置けている、言い方を変えれば達観できてる自分がいるので少し安心しています。

とは言えいつかまた歩ける日が来るのを信じてやまないので、身体のコンディション維持の為にリハビリを続けている今日このごろ。
少し前までは、「歩ける日が来るかもしれないからやっている」と言いつつも、本当にそんな日が来るのかという不安もありリハビリが非常に億劫で仕方がなかったのですが、最近の再生医療の進歩を目の当たりにするとマジでちゃんと機能維持しないと後悔するぞ、という嬉しい強迫観念で何が何でも続けずにはいられなくなりました。

※イメージです

いよいよ来夏に臨床研究開始!iPS細胞で脊髄損傷治療!うっす〜い知識で語るサルでもわかる程度のiPS細胞のはなし
再生医療で治療不可能な脊髄損傷を治すのじゃ!

はじめてののリハビリ

脊損になって初めての本格的なリハビリは受傷してから半年も経った頃でした。
私は事故などによる脊髄損傷ではなく自己免疫疾患によるものだったので、先生の見立てでは、早くにリハビリを始めれば、ある程度には回復するだろう(立位や歩行など)とのことでした。(MRIをみると脊髄がぶった切れてるかんじはない)
しかし闘病中に突如現れた神経痛のせいで、体を動かすことはおろか、軽い振動で激痛が走るような容態になってしまい、リハビリどころではなくなってしまいました。

今思えばこれが一番の失態で、あのときもっと早くに神経痛を克服できていれば今よりももっと機能が回復していたんじゃないかと思います。
その頃の話はこちらから

脊髄損傷におけるリハビリは早く開始するに限る!!!
なのでみんな頑張れ!!!

で、半年の療養を行い遅ればせながらやっとこさリハビリを開始致しました。
私の期待していたリハビリはもちろん立位歩行訓練だったんですが、立ても歩けもしない脊損になった患者がまず行うリハビリは車椅子で暮らす為の訓練、残存機能で生活を送る練習なので、そういうリハビリは一切させてくれません。
いやもうそりゃあ、がっかりくんでした…。(©爆問 太田)

てめえこの野郎!!!半年後には完全復活したるからの!!!スパルタ大歓迎じゃオラ!!!!っていう意気込みで転院してきたのに、いざ始まってみればずっと着替えの練習とか、プッシュアップの練習とか、寝返りの練習とか、トランスファーの練習とかそんなんばっかりで、ぜんぜん楽しくないんです。
ただ思い知らされる、歩く以前に寝返りすら満足に出来ない自分。

つ、辛ぇ〜〜〜〜〜!
今思い出しても辛い〜ヒィ〜〜!

もう辛くない日は無かったかもしれません。
しょっちゅう夜な夜な泣いてました。

でもそんな日々も終わりがあるのが分かっていたので、淡々とこなすことでなんとか乗り切れました。
あと入院中毎週お見舞いにきてくれていた旦那さんや家族、みなさんのおかげも大きい。
あの時はありがとうございました。
特に担当PTのワDには感謝しています。バクとパンダの区別がつかないワD…元気かな…。

退院後のリハビリ

退院後は実家近くの整形外科にあるリハビリ施設を週二回外来で通うことに。
結婚するまでの一年間ほどしか居なかったのですが、ここでの時間は今の私を作ったっと言っても過言じゃないな〜なんて思います。

というのもお世話になったPTさん達の存在が大きかったです。
そのうちの一人、K村さんは実家を離れた今もお世話になっています。

ここに通い始めたころ、初め担当してもらったPTさんに、目標を聞かれたことがありました。
「とりあえず歩ける日がくるまで機能維持が目的です」的なことを言ったと思います。
すると「歩けるようになるくらい言っていいやん!」と言ってもらったんですね。

ぶっちゃけその頃は、まだ自分の身体に向き合ってはいたものの現実が悲しくて仕方がない真っ最中だったので、自分を傷つけないように「歩けるようになる為にリハビリします!」と大きいことは言えませんでした。
けれど、私の症状を知っているうえで敢えて大きいことを言ってくれたのは嬉しかったです。
付き合ってくれるんだな、と思わせてくれたのが嬉しかったのかもしれません。

その後すぐにK村さんの提案で装具を作ることになりました。
まさか装具を作ってリハビリするようなことをさせてもらえるとは思っても居なかったので、超ワクワクしました。

腰まである厳つい装具。モビルスーツかな??

完成して初めて立ったときは、久々の自分本来の目線に新鮮さと懐かしさを感じたのを覚えています。
この装具は今現在も現役で使っていて、胴回りの固定を外せるようにするのが今の目標です。

K村さんは私のことを妹のように可愛がってくれていて、何か困ったことがあったらすぐに相談に乗ってくれる頼もしい人です。
身体のことから生活のこと、仕事のこと、私自身の人生のことについていつも真剣に話を聞いてくださいます。
あまりに的を得たことを言うのでしょっちゅう泣かされましたが、そんなところも信頼できる要素のひとつです。
今まで出会うことが無かってですが、信頼できる恩師ってこんな感じかなっていう存在です。
これからもよろしくお願いします。
最近私の都合で会いに行けていないので、近々また連絡させてください〜。

ちなみにその頃のリハビリは、より自分の身体を使いこなすためにひたすら寝返りをしたり(施設に広い人工芝が敷いてあっていつもそこでゴロゴロしていた)、プッシュアップしたり、床トラを極めたりしていました。
あとは歩行器や平行棒に捕まりながら装具を付けて長く立位を保つ練習などもしました。

施設が先生のこだわりでいろいろと充実していて、スタッフさんの人柄や地元っていうことも相成って、とにかくのびのびとリハビリができた期間でした。

現在のリハビリ

結婚して新生活が始まったと同時にリハビリする施設も変わりました。
リハビリ入院していた病院の姉妹病院で、外来のリハビリ専門クリニックです。
以前入院していた病院が経営しているということもあって、こちらのクリニックに転勤してくる顔見知りのスタッフがいるのでとても気楽にリハビリができています。

本当に毎回自分自身で感心してしまうんですが、私の対人運?がめちゃくちゃいい。
現在のクリニックで担当頂いているPTさんがこれまた素晴らしい人で…。
対人運強いってもうこれだけで人生攻略できんじゃねえかって思う。
人間性はもちろんのこと、PTさんとしてもすごく出来た人だなと上からで大変申し訳無いんですが、すごい感じます。
程よくスパルタで、私のリハビリのテンションも上げてくれるし、やるべきことも明確化してくれて、すごく頼りになります。
お願いだから転勤しないで…と心から願ってやみません。

今現在のリハビリは週一回の一時間と少ないですが、なんとか現状維持は出来ています。

【現在のリハビリ内容】

・20分間ストレッチと体幹練習
・40分間装具をつけて立位歩行訓練

基本はこんなかんじ。
立位歩行訓練は平行棒でやるんですが、担当PTさんの回のときは平行棒なしで身体を後ろから羽交い締めみたいに支えてもらって歩いたりします。
めっちゃしんどいです。スパルタです。
うまく装具が付けられたときは(フット具合で変わる)、手放しで立つことが出来るようになりました。
実ははこれめっちゃ進歩。
入院中は立った姿勢になるだけで失神していたのでそれを思うとかなりの進歩です。

ちなみに家でストレッチをするのも日課です。
毎晩寝る前に腸腰筋っていう筋肉を伸ばすストレッチを旦那さんに手伝ってもらってやっています。

毎日やっているストレッチ。腸腰筋が固くなると立位歩行の妨げになる。立つとゴリラみたいな姿勢になる。

ただ全然足りていないので、日中にもやるようにします。
今決めた。
あと4点歩行器で立つ練習もします。
ただ膝も腰も固定されない状態で立つのでほぼ腕の力で全体重を支えている状態になります。
全く保ちません。
体幹ほしい。

最後に

もうリハビリめんどくせえしやめてえな〜と思ったときにK村さんに教えてもらったんですが、リハビリって英語で「rehabilitation」と書くのですが、元はラテン語の「rehabilitare」から来てるんですって。
re」が「戻す」、「habilitare」が「適した・ふさわしい」という意味だそうです。

つまり、リハビリって機能回復・生活・社会復帰ができたら終わりだと思ってたんですが一概にそうではなくて、リハビリの終わりっていうのは人それぞれの「自分らしさ」を取り戻せたときこそがその時だということだそうです。
なので私がリハビリについて悩んでいたときに、K村さん的にはもう私は私らしさを取り戻していて、リハビリは必要ないんじゃないかと提案してくれました。
初めて聞いたときは目からウロコ。
もうあたしリハビリ終わってたんか!!!と。
立って歩く為にはど真剣に血反吐吐くくらいリハビリしなくては、と闇雲になって自分を追い詰めていたことにそのとき初めて気が付きました。

今更ここまでやってきて今日明日すぐに歩けるような兆しが現れる訳でもなし、今すぐに再生医療が臨床で実施される訳でもなし。
そんなに追い詰める必要ないし、なんならちょっとお休みしてもいい訳です。

けれどいざそう気が付いて、じゃあリハビリ辞めるかと言われると「嫌だ」と思いました。
辞めることを考えたとき、ものすごく不安になったからです。
ここまで続けてきたものを突然辞める怖さと、ズボラの申し子の私が自己管理だけで機能維持が出来る訳がない、そう思いました。
どうやら私の中でリハビリは大事な安心材料になっていたようです。

まあ何が言いたいのかと言うと、かつての私のように今まさにがむしゃらになって自分を追い込んで苦しんでいる人がきっといるんじゃないかなと。
実際がむしゃらに頑張って成果が出ている人は引き続きがむしゃらに頑張れ!と応援したいのですが、随分頑張ってきたけど何の成果も感じられない何でだろう自分の頑張りが足りないんじゃなかろうかと悩んでいる人は、ちょっと一旦深呼吸をしてほしいのです。

やっぱり脊髄損傷ってめちゃくちゃ厄介で、一度傷ついた脊髄はN極とS極が絶対くっつくことがないように(原理は全く違いますがくっつかない例えとして)再び元に戻ることは出来ません。
今の医学ではどうやったって戻らないのが脊椎動物が誕生して今日までの摂理なのです。
厳しいですが、頑張って頑張って気合で何とかなるっていうのとは全く別のベクトルなんですな。

リハビリによって回復された方々は本当に尊敬するし、そういう事例を目にするとなんで自分は出来ないんだろうって自身を卑下してしまいます。
でも卑下したところで無駄でしかないです。
リハビリで出来ることの限界を知った身からすると、その瞬間はいつか来ます。
頑張れないな、と思った時が限界かもしれません。
限界が来ても仕方ありません。
神様が人間を作るときにプログラミングミスしたんだと思ったほうが良いです。
不要な親知らずと一緒です。

私はそれを認めるのに随分時間がかかりましたが、向き合ってからの方が精神衛生面でクリーンになれました。

自分自身の現状に向き合ってみた結果、今の私はリハビリだけの機能回復は殆ど期待しなくなりました。
でも決してこれはマイナスなことではなくて、向き合うことで立つ歩く以外の部分、体幹は鍛えられることに気が付くことができるきっかけにもなりました。
私の場合まだやれることはあると知ることができたし、何より出来ることと出来ないことを割り切ったことで、気持ちが軽くなったのは間違いありません。
まあそう思えるようになったのは、このところの再生医療の進歩のおかげが大きいですが。
立って歩くに関しては再生医療にお任せして、今出来ることだけをする!それが私のリハビリの形です。

今でも行くのがスーパー面倒くさくなって辞めたろかと思う時がたまにありますが、無理をしないっていうポリシーの元なんとか続けられています。
あとiPS細胞研基金に毎月寄付をしています。
これすごくモチベーションになるのでおすすめです。

いろいろ自分語りしてしまいましたが、イチ脊髄損傷受傷者の意見として軽く聞いてもらえれば幸いです。
こいつはこう言ってっけど自分はそんなふうには思わない!っていう気持ちもとても大事だと思います。

てことで今後もみなさんほどほどに頑張りましょう!
大事なのは自分らしくあることです。

それじゃあの!